はじめに
ここ数年で囲碁AIが発達し、それに伴って棋書も充実してきました。
Amazonで「囲碁AI」と検索をかけると、多くのAI本がヒットします。
しかし、AI本は囲碁の上達においては不要なのではないかと感じました。
実際に私も囲碁AI本を何冊か購入した事がありますが、野狐9段を本気で目指した際にはまったくと言っていいほど読んでいません。
囲碁を教える人の動画でもAI流教材は不要だと語っているので、良かったらこちらもご覧ください。
理由1 消費期限がある
手筋や詰碁は永遠に変わらないものですが、AIの打ち方はどんどん変わっていきます。
5年前のAIと最新のAIでは打ち方も強さも違いますし、同じ時代の別のAIでも同様のことが言えます。
囲碁AIの世界大会が開催されており、私が普段使っているGolaxyも2019年の大会で優勝しています。
なので、今勉強している内容が1年後にはまったく役に立たないものになっている可能性があります。
AI本に投資するくらいならGolaxyを使用するのに必要なコインを購入し、自分の実戦に出てくる形の事前研究や検討に使った方が良いと感じています。

もしくはソフト打ちをして実戦を通して学ぶ方法もあります・ω・(ソフト打ちダメゼッタイ)

理由2 手筋や詰碁の方が重要
理由1の冒頭でも触れましたが、手筋や詰碁という絶対に間違えてはいけない部分で正しく打てる事の方がよっぽど大事です。
昨年の岩手竜星戦決勝では、1ヶ月間勉強してきた手筋や詰碁のおかげで勝つことができました。
もしやっていなければ大事な場面で正しく打てずに読み負けしていました。

またAI流の打ち方は自分から仕掛けなくても勝てますし、相手が仕掛けてきても簡明なワカレに持っていくことが容易です。
なので、AIの最新定石は必要最低限押さえておけば大丈夫です。
とりあえず基本手筋事典を丸暗記しましょう・ω・

理由3 自爆する可能性がある
これが今回この記事を書こうと思った最大の理由です。
AI流の打ち方で有利になろうと思った結果、相手に知らない手を打たれて逆にツブレてしまうという悲惨なことになる人が多いからです。
先日盛岡の囲碁センターで行われたエクナ杯決勝戦(2子局)の終局図をお見せします。

見てのとおり、右下の黒がツブレています。
相手の方はこの場面で戦意喪失して投了しました。
なぜこのようなことになってしまったのか、右下の部分に焦点を当てて解説します。
初形図

小目から大ゲイマに構えたところが始まりでした。
ここで黒はAIによって登場した手を打ちました。
進行図1

黒1のツケに白2とハネ、黒3と押さえました。
白の一間トビに黒がツケたのと同じ形です。
ここで白4とサガリました。
この打ち方を相手の方は知らず、あのようなツブレ方になってしまいました。
正しい打ち方はノビる一手です。
最善の進行

しかし初見ではヌルく感じ、実戦のようにハネてしまうのもわかります。
進行図2(5は6の下)

白に2子は取れますがポン抜きの形が素晴らしく、部分的に白が得をした格好です。
ここでも黒11では2線に押えて取っておけばまだ良かったです。
参考図1

実戦はこの取り方は不満と見て、さらに得を図ってきました。
しかしそれがツブレの原因となってしまいました。
進行図3

黒11は成立すれば先程よりも得ですが、白から巧い手があります。
進行図4

まずはともあれ白12・14と進みます。
実戦は左上に黒があるのでシチョウは成立しませんが…
進行図5

白16から18とカケる手があり、これで黒4子が捕まっています。
ここからさらに進み…
進行図6

白22までで投了となりました。
一応コウではありますが、白取り番の天下コウなのでどこに打たれても解消します。
AI評価値もすでに2子のハンデは消え去り、白優勢となっています。(コミ6目半を含んで表示しています)

このような事にならないためには、最初からAI流の打ち方をしないか完璧に覚えるかの2択となります。
まとめ
どんなに囲碁AIが発達しても、使う人によっては毒にも薬にもなります。
なので、常に自分の頭で考えることが大事になってきます。
私もアマ名人の全国大会でこのような潰され方をしたので気を付けないといけません笑

AI流の打ち方はすべて覚える必要はなく、自分の碁に出てくるであろう形を知るだけで十分です。
AIの打ち方よりも、AIの正しい使い方をマスターするのが大事なのかもしれません。
そうすれば今よりも囲碁が楽しく感じられると思います。