はじめに
今回は私が手筋を勉強していくなかで出会った問題のなかで、一番感動した1問を紹介します。
題材とするのは、山下敬吾先生が書かれた「基本手筋事典」です。
私はこの本を繰り返し解いたことで野狐9段になることができたので、感謝してもしきれないと思っています。

問題
今回紹介する1問はこちらです。

テーマは右上の取られそうな黒石を凌ぐことです。
ちょうどL-17とR-17の2箇所に白のキズがあるので、うまく両睨みにして手にする必要があります。
一度このまま解いてみたい方は手を止めてみたり、碁盤に実際に並べて考えてみてください。
最初の3手
おそらく最初の黒3手はすぐに思いつくでしょう。
実践でも出てくるような右上の切りから始まります。こちらの図から考えてみるのも良いと思います。

第一感の手筋
ここで筋の良い方なら目につく一手があります。
それは、O-19と一線にトブ手です。

この手はL-17のキリとQ-18のキリを見合いにした手です。
実は私もこの問題解いたときに真っ先に思い浮かびました。
白がどちらかのキズを守った場合の進行をそれぞれ見てみましょう。

右の方を守った場合は、黒1があるおかげで白はN-19に打つと取られてしまいます。

左を守った場合は、これまた黒1があるおかげで白はP-19に入れずに白3子を取ることができます。
私を含め、最初にこの問題を見た多くの方がこれで正解だと思ったことでしょう。
思わぬ罠
しかしO-19とトブ手は作者が用意した罠でした。
どういうことかというと、直前の図で白3子が取られた後には続きがあります。

白6から隅の2子を助ける手があります。
黒は白3子を取ることができましたが、よく見ると全体の黒は1眼しかないため取られてしまいました。
もしこの変化を初見で読めた方は確実に私より強いです笑
正解手順
ここから正解手順を紹介します。
実は初手にO-19と打つのは手順前後で、実際に後で打つことになります。

正解の初手はO-18と切る手でした。
白2とアテられたときに黒3とサガルのも妙手。この後白は2通りの受け方があります。

1つ目は白4と左からアテる手。
ここで黒5と白4子をアタリにしながらL-17のキリを見合いにするのが好手。
白6と黒2子を抜くしかありませんが、最後に黒5のおかげで白はN-19に打つと取られてしまいます。

2つ目は白4と右からアテる手ですが、ここでも黒5が手筋です。
白は黒2子を取ると先ほどと同じ変化になりますが、白6とツケルのがまた妙手。
黒7の切りとP-19の白3子取りを同時に受けています。
白12までコウがお互い最強に応じた場合の変化です。
ちなみに黒のコウ取りに白が黒2子を抜くのは、黒がP-19と打てるようになります。

初見でここまで読めた方はさっさとプロになってください笑
まとめ
今回紹介した1問は簡単そうに見えて思わぬ罠が潜んでいたり、正解手順の中にも白から妙手があって最終的には予想外の図になりました。
実践でこのように打てたらかっこいいですよね笑
もしかしたら囲碁を勉強するなかで感動する瞬間が訪れたときに一気に成長するのかもしれません。
洪道場の洪先生も、武宮先生の一局を並べたときに「人生が変わった」と仰っていました。
みなさんも囲碁で感動を体験したときに棋力が一気に向上するので、いま棋力が伸び悩んでいる方もその瞬間を目指してみてください。