はじめに
今回は私が一番思い入れのある対局をGolaxyで評価値を見ながら検討していきます。
この対局は私が高校2年生のとき、2012年の高校新人戦東北大会での大将戦の対局です。
相手は宮城県の後藤直也くんで、過去に二度対戦がありました。
一度目は中学2年生の時、ジュニア本因坊戦東北大会準決勝でした。
東北代表は2名でしたので、この対局に勝ったほうが全国大会に出場できます。
そのときは私の黒番で、当時よく打っていた中国流を使って4目半勝ちとなりました。
二度目の対局は高校1年生のとき、ちょうど一年前の高校新人戦での大将戦でした。
ですが正直言うとこのときの私は「中学2年生のときに一度勝っているからいけるっしょ」と余裕ぶっこいていました笑
油断していたので勝てるわけもなく、白番で2目半負けました。
しかもその負けが響いて個人で全国に行けなくなりました。
団体は2位通過で全国に行くことができて奇跡的に全国3位になれたことは嬉しかったのですが、どうしても個人で全国に行けなかったことが悔しかったのを覚えています。
高校2年生になり、高校新人戦の岩手県大会で優勝して再び大将として出場が決まりました。
そして後藤くんも大将として出場したので、1年越しのリベンジの機会がまわってきました。
2年連続でお互い大将として出場していたことから二人のレベルの高さがわかると思います笑
一番思い入れのある理由
なぜこの対局が一番思い入れがあるかというと、この勝負に負けたら囲碁をやめようと思っていたからです。
それほどの思いで対局に臨んでいたからなのでしょう。
この対局の棋譜は所持していませんが、終局までの全手順が私の頭の中に今でも残っています。
作り物ではないので安心してください笑
またスポーツ選手が「ゾーン」と呼ばれる超集中状態に入ることがありますが、このときの私も間違いなくその状態に入っていました。
対局中は気づかなかったのですが、対局後に突然まわりの対局している音や外の雑音や観戦者の話し声などがうるさいくらいに聞こえてきて、視界も一気に広がっていったことも覚えています。
さて、いよいよ対局の解説に入ります。
私の白番です。
棋譜は便宜上、黒番から見た盤面になっています。
第1譜 1〜35手目まで

黒の両小目・白の二連星で始まりました。
私は今でも白番だと二連星で打つことが多いです。
右下の定石は2010年あたりからAIが出てくるまで流行った形です。
なぜ今は打たれなくなったかと言えば、AIによるとこの場合白が良いワカレのようです。
定石が一段落した場面の評価値を見てみましょう。
参考図1−1

見てのとおり、白が60%近くあります。
10年ほど前はこれが互角だと思って打っていたのが恐ろしくなりますね笑
左下黒からのカカリに対して二線トビは工夫した一手。
単に受けると価値の低い下辺に厚みを作らされるのを嫌いました。
参考図1−2

しばらく進むと左側は黒白逆にすると置碁でよく見る形となりました。
白は左辺の黒に打ち込んでいきましたが、ここはまだ小さかったようです。
AIは右辺の黒模様に割り打ちするのが大きいと言っています。
参考図1−3

確かにこう打たれてみると次の黒の手が難しいように思えます。
黒は白の打ち込みに対して正しく受けていればわずかに打ちやすかったようです。
参考図1−4

こう打たれると左側に黒の厚みができてしまったので白が打ちづらそうです。
実践は白が楽に連絡できたため、黒はチャンスを逃してしまいました。
ネタバレするとこれ以降黒に勝機はなく、ここから白のペースのまま碁が終わってしまいました。
最終手35手目で黒は上辺に打ち込んでいきました。
ここで次の一手クイズを出します。
36手目、白の私はどこに打ったでしょう。
第2譜 36〜67手目まで

次の一手クイズの正解はP-15でした。
正解図

AIが登場した今となっては珍しくはなくなりましたが、この対局はそれ以前の2012年です。
今の自分が見ても、よくこの地点に打てたなと思います。
この手は対局相手の後藤くんも、棋譜を取っていた方もまったく予想になかったそうです。
次の黒の受け方によって柔軟に対応することができます。
参考図2−1

素直に受ければ右辺の黒2子への攻めを見ながら収まることができます。
参考図2−2

上辺の白1子を切り離しにくれば右辺で軽く収まります。
後々白からJ-18にスベることができるので、上辺は大した地にはなりません。
実践は右上と上辺の振り代わりとなりましたが、黒に切られたときに右側の白3子を凌ぎに行くほうが勝りました。
実践は上辺に味残りでしたが、黒がすぐに手をつけにいって失敗したのでこのあたりで白の勝勢となりました。
黒は右辺の模様を広げて最後の勝負にきました。
参考図2−3

第3譜 68〜132手目まで

白68のツケから荒らしの起点を作りました。
白74・76と二間ビラキができればほぼシノギ形です。
黒も簡単に生きられては勝ち目がないので、白82のツケに対して強く反発してきました。
ですが白108と一目抜いたときに、黒109と受けなければならないのがツライところ。
白110から白124まで手厚くもう一眼作って生きることができました。
勝敗には影響しませんが、白124はN-11とノビることができました。
黒が眼を取りに行くとダンゴになっている黒が逆に取られてしまいます。
参考図3−1

黒125は攻め合いを仕掛ける一手。
白はすぐに取りに行きましたが、黒は自分の手数を伸ばすことができないためP-18にノビるのが冷静でした。
参考図3−2

攻め合いになったときに、一度白130と黒三目へアタリしたのが冷静な一手。
これを打たずにM-19と渡ってしまうと一気に紛れてしまいます。
白132できれいに取られては黒に勝ち目はなくなったため、この手をもって黒の投了となりました。
参考図3−3

まとめ
一年越しのリベンジができたこともそうですが、それ以上に自分自身がこの一年間で大きく成長できたことがとても嬉しかったのを覚えています。
大会結果ですが、大将戦では5戦全勝で文句なく優勝して全国にいくことができました。
団体も全勝で優勝できたのですが、チームの合計勝敗数が14勝1敗というとんでもない成績を残すことができました。
私が後藤くんに会ったのは高校3年生の長崎での高文祭が最後です。
もしまた彼に会うことができればこの話をしてあげたいのと、彼のリベンジマッチを受けて立ちたいと思います笑