はじめに
岩手に帰ってくる1ヶ月半ほど前に所用で洪道場にお邪魔した際、特別に生徒さんと対局させていただくことができました。
洪道場は一力二冠や芝野王座などを輩出した道場です。

対局相手は小学生の男の子で、今年東京都で開催されたアマ名人戦・アマ本因坊戦でともに本戦出場を果たしています。
今から将来がとても楽しみです。
対局解説
対局は持ち時間40分切れ負けで、私の白番となりました。
最後の方は手順前後があるかもしれないのでご了承ください。
第1譜 1〜48手目まで

お互いが四隅を打ち終わった後、黒は三々に打ち込んできました。
洪道場では最新AI定石の本を出版しているというところからもわかりますが、生徒さんたちはAIを使って熱心に研究しています。
私も負けじと三々に入り返しました。
左上白のケイマに対して黒19とツケたのは少し意外でした。
ツケコシから難解定石に持っていくものだと思っていたからです。
参考図1−1

白26とノビたのは立派な一手だと思ったのですが、実際は少しヌルかったようです。
AIは上辺に打つ手を推奨しています。
参考図1−2

白32・34は黒31のカカリが来たことで黒に32と抑えられるのが大きいと判断したのですが、黒を厚くしてよくありませんでした。
白42は地だけを考えた一手。
ここでは白30のおかげでシチョウが有利なのでカケツグべきでした。
このあたりでは黒が優勢になっています。
参考図1−3

第2譜 49〜81手目まで

黒49から白3子に対して迫っていきました。
しかし黒61・63と眼を奪いに行ったのがやり過ぎだったようです。
ここでは黒石の安泰を図るのがわかりやすく優勢を維持できました。
参考図2−1

実践では黒75で80と抜かれると形勢に自信が無かったですが、右辺の白模様が大きいのでむしろ白が優勢になるようです。
黒は75〜78の交換を決めてから79と白模様を消しに来たので白80とツギました。
黒81と断点を守りつつ黒を強化しましたが、次の白82は白78との関連から狙っていた一手があります。
参考図2−2

第3譜 82〜131手目まで

狙っていた白82は切りでした。
参考図3−1

生徒さんはこの手を軽視していたようで、事実として感想戦にて「思ったよりも厳しかった」と話していました。
私としてもこの手を境に流れが来たように思いました。
実践ではその後白90と曲がりましたが、98のほうがより厳しかったようです。
私もその手は読んだのですが、切った石がすぐに取られても大丈夫なのかどうかを判断しきれませんでした。
参考図3−2

白98・100は気持ちのいいシボリ。
白102〜106は白の安泰を図りましたが、黒を取りにいくことができたようです。
白はチャンスを逃したように思えますが、この進行になれば優勢だという自信があったので問題ありませんでした。
Golaxyはコミ2個分ほど白が良いと言っていますが、実践ではそこまでリードしているとは思っていませんでした。
参考図3−3

第4譜 132〜192手目まで

このあたりから私の持ち時間が少なくなってきたのでほぼノータイムで打っています。
その影響で所々細かい損を重ねています。
特に黒147と白148を交換されたのは痛い。
早く黒のダンゴ石の急所に迫る手を打つべきでした。
参考図4−1

それでも優勢を維持できたのは白82の切りが成功したからだと言えるでしょう。
案外コミ2個分良かったというのは間違いではないのかもしれません。
白192とワタることができたことで勝ちを確信しました。
第5譜 193〜222手目以下略

黒193のハネは1目半ほどの損。
ここではサガる手がありました。
参考図5−1

しかし次の白194もミス。
黒2子を抱えるのが正しい受け方です。
参考図5−2

その後の白218はさらにひどい。
どう見ても曲がる手が正しいです。
目数的には黒193と白194+白218の損が同じ位です。
時間が無かったとはいえこのようなミスは今後気を付けます。
参考図5−3

まとめ
このあと最後まで打ち、結果は白の3目半勝ちとなりました。
また私の残り時間が約30秒ほどだったので危なかったです。
この対局は白82の切りから流れを掴んで勝つことができましたが、それまでは苦しい形勢だったので運が良かったと思います。
彼にはこれからも洪道場で勉強してプロの世界で活躍することを願っています。
そして私に「あのプロ棋士に勝ったことがある」と自慢させてください笑