はじめに
今回は私が高校生のときの棋譜を解説します。
対局は10年前の岩手王座戦準々決勝です。
昔の棋譜はいくつか残っていましたが、本譜を選んだ理由は3つあります。
①今年最初の県大会が王座戦だから
②対局相手が小学生時代の師匠である江村秀弘さんだったから
③最後に事件が起きそうだったから
また10年前ということでAI登場以前の対局となりますので、ある意味新鮮な気持ちになるかもしれません笑
対局は私の白番となりました。
第1譜 1〜26手目まで

黒の布石は同じ時期に結城聡九段が愛用していた布石です。

相手に黒の勢力圏に入ってくるのを誘っている戦型で、持ち時間が少ない対局にはピッタリの作戦のようです。
左下の定石は今となっては見なくなりました。
黒9では現代なら間違いなく三々に入ることでしょう。
参考図1−1

第2譜 27〜49手目まで

黒27と星に高くカカルのは珍しい手でした。
白28に対して黒29と挟んだので、右上で定石形ができました。
白40(黒39の下)ではシチョウが有利なため、黒43と伸びる手が勝ったようです。
しかし黒も右の2子を助けるほうが良かったようで、最終的なワカレは白が得をしています。
参考図2−1

第3譜 50〜88手目まで

白50のノゾキを一本利かしてから白52と下からツケましたが、白56のツケは黒を固めるだけの疑問手でした。
AIは切りで味をつけてから左上を動く手順を推奨していました。
参考図3−1

黒59を打ってから黒61と切ったのは江村さんらしい力強い進行でした。
当時の私はこれでビビってしまったのか、白76とダメ場を打ってしまいました。
ここでは切りを防いで辛抱するくらいでした。
参考図3−2

第4譜 89〜124手目まで

黒89と広げてきたため、白90から荒らしに行きました。
白92〜96で黒97と打たせたのは今見ても我ながら巧い手順です。

黒111の切りからコウが始まりましたが黒113のコウダテは損のようで、下辺の白とフリカワリにするくらいだったようです。
参考図4−1

黒123の抜きは当然のように見えますがAIによれば大悪手のようで、ここでは左辺白を大きく荒らす手がありました。
黒1・3と連続でオク手を示しましたが、これを打てる人はアマチュアの世界にはいません笑
参考図4−2

第5譜 125〜158手目まで

ここからヨセ勝負となりました。
黒133と抜かれたのは大きく、先にツギに打つべきでした。
白が厚くなるので中央に黒地ができにくくなっています。
参考図5−1

第6譜 159〜226手目まで

このまま行けば白が少し残る形勢でしたが、黒173に対して受け間違えてしまったことで逆転しました。
白174では黒181に打つのが正しく、切り違いから取りに来ても生きるスペースはありました。
実践は白2子をタダで取られてしまいました。
参考図6−1

本対局は秒読みがないので、お互い持ち時間がギリギリの勝負となっていました。
白226の時点では黒が1目半ほど残る形勢でしたが、最後は江村さんの時間が切れて勝ちとなりました。
最後の事件
白226は今打つ必要がないように思えますが、実は黒から手があります。
最初は何もないと思って白224と下辺を膨らみましたが、江村さんが考えている時にもう一度ヨミを入れたことで気がついて背筋が凍ったのを覚えています。
まずは黒1と下がるところから始まります。

黒5のホウリコミが大事な一手で、これにより白は上から詰めることができなくなります。
当然白は黒5を抜きますが…

黒7と3子にして捨てるのが妙手。
当時は私以外だれも気づいていませんでした。
最終的にはこのようになります。

実は右辺の黒もセキになるという面白い形になります。(黒はコウを仕掛けない)
しかし元々の地を考えると白地は16目▶5目(アゲハマ4つ+黒9を最後に抜くため)で黒地は8目▶0目なので、黒が3目得していることになります。
なので結果的には白198のハネでは下がるのが正しかったというわけです。
まとめ
この対局には運良く勝ちましたが、準決勝で小林公郎さんにボコボコにされて3位に終わりました。
なので去年行われた岩手棋聖戦挑戦手合では初勝利だったのでとても嬉しかったです。

今年の岩手王座戦県大会には江村さんと小林さんも出場するので、なんとか勝てるように頑張りたいです。